
水中・水辺で行われる競技でいちばん有名なものと言えば水泳であることは言うまでもありませんが、この他に知られている競技を挙げるとすれば水球があるのではないでしょうか。
水球は水中の格闘技の異名がある通り、非常にフィジカルが激しいスポーツだとも言われています。そんな競技で使われる水着がどういったものか、競泳水着と比較して見てみましょう。
この記事のポイント
- 水球はフィジカルが激しいスポーツだとも言われている。
- 水球は、ボールを奪おうとするが故に相手にぶつかったりする行為が当たり前なことから、使用する水着に対しては耐久性が求められる。
- 水球はチーム競技で、チーム内で統一された水着を着用しなくてはならない。
水中の格闘技?水球とは

▲水球水着のことを知る前に水球について触れておこう。
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まず簡単に水球がどういったスポーツであるかについて触れておきましょう。
水球の発祥は19世紀中期イギリスで興ったと言われています。
この時代においては、ウォーターダービーと言って馬の頭がついた樽にまたがって競争が行われたりしており、興行の位置づけとして水球も行われていました。
しかしサッカーのように水中で脚を使ってボールをコントロールすることが難しかったことから、ボートを使ってあるポイントまでボールを運ぶことをチームで争う、といった競技に置き換えられていました。
そのような背景がある中、イングランドのメトロポリタン水泳協会が、1870年に水中フットボール(Football in the water)の名前でルール整備されたものが水球の起源と言われています。
ちなみに現在では水球のことを英語で「Water Polo」と言いますが、明確な文献ないものの、一説では競技で使われたゴム製のボールがインド製であり、ヒンズー語でPuluと呼んでいたことから、そこから訛って「Water Polo」になったと言われています。

▲水球が行われるプールは水深2m以上。脚をばたつかせて浮いている選手たち。
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水球は縦30メートル、横20メートル、水深2m以上の長方形をしたプールにゴールを設置し、7人で構成されたチームがゴールにボールを入れて競うサッカーのようなゲームです。
水深が2メートル以上であることから、脚をプールの底について歩くようなことはできず、常に浮いた、もしくは泳いだ状態でボールをコントロールしなくてはならない見た目よりもハードなスポーツです。
ルール上はもちろん故意に相手を殴ったり、沈めようとする行為は反則ととられてしまいますが、ボールを奪おうとするが故に相手にぶつかったり、相手選手の水着を強く引っ張ったりする行為は当たり前のようにおこるため「水中の格闘技」と呼ばれるようになった所以ともなっています。このあたりはサッカーやラグビーのような考え方に近いものがあるかもしれません。
水球で着用できる水着はどんな水着?

▲水球で使われる水着にはどういった物があるのか、ルールから探ってみる。
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水球で着用できる水着はどういったものがあるのでしょうか。
公益財団法人 日本水泳連盟水球競技規則を確認してみると、水着の形状に関する記載はありません。
スポンサーロゴに関する取り決めは行われておりますが、その中でツーピース水着にも言及があることから、ワンピース、ツーピースであれ着用することは可能なようです。
水着そのものに対して言及があるのは「透けないこと」「透けるような水着に対しては下履きを身につけること」という文言があるのみで形状については自由なようです。
ただし水球はチーム競技であるため、登録されたチームのユニフォームとして水着を着用することになるので、自分だけ違う水着、というわけにはいきません。チーム内で統一された水着を着用しなくてはならないこともルールに記載されています。
競泳水着も着用できるが問題点が・・・
着用する水着が自由であるということは、極端な話スクール水着でもいいのかという議論はありますが、練習などで着用されるものの多くは競泳用水着が使われています。
しかし水球において競泳水着を着用して競技に臨むことは、ある問題点が残ります。
冒頭にもあったとおり、水球は「水中の格闘技」と言われています。ボールを奪うために相手選手の水着を強く引っ張るなども行われるため、強度の弱い競泳水着では脱げたり、すぐに破けてしまうといったことが十分起こります。
実際に競泳水着を着用した水球競技では水着が破れてしまうハプニングは珍しくないため、あえて2枚重ねて競泳水着を着用する選手もいるほどです。
水球用の水着はどんな水着?競泳水着と比較してみる

▲水球水着と競泳水着を並べて比較してみよう。上記写真では左側が水球水着(mizuno WATER POLO N2JQ626000)
そこで登場するのが水球用の水着です。
見た目は競泳水着のような印象がありますが、どういった点に違いがあるのか表でまとめてみました。
競泳水着 | 水球水着 | |
---|---|---|
材質 | ポリエステル、ポリウレタン混紡 | ポリエステル、ポリウレタン混紡 |
表面 | 特になし | ラバー、光沢加工(一部) |
生地の厚み | 薄い | 厚い |
ホールド感 | 中程度~高 | 高 |
背面 | 背中が大きく空いている | 背中も生地で覆われている |
ストラップ | 紐型 | 水着と一体型 |
価格 | 低価格帯~高価 | 高価 |
水着の性能としては動きやすさと強度増強がキーポイント
上記の比較表を見てみると、水着の素材となるポリエステル、ポリウレタンでは大きな違いはありませんが、水球水着の大きな特徴とも言える表面の加工に大きな違いがあります。
その時代のモデルにおいて違いはありますが、表面がラバー状に加工されたモデルが存在します。
表面をラバー上にすることで、相手選手から掴みにくくする他、強度も競泳水着よりも高い性能を発揮します。この点は、生地の厚みについても表れている点です。

▲男性向けの水球水着(MIZUNO 85RQ96000-62 WATER POLO)だが表面がラバー状に加工されているのがわかる。
水球水着の動きやすさという点では競泳水着がベースとなっているため、特にレッグカットについては基本的にハイレグカットとなったものが一般的ですが、背面と肩部分でも競泳水着と大きな違いがあります。
水球水着は肩のストラップがなく、水着と一体となったようなデザインで背面もすべて布地で覆われています。
このことから着用したときのフィット感、ホールド感は競泳水着よりも高いものになっています。
価格帯は競泳水着よりも高い
競泳水着と比べてもう一つ特徴的なことがあるとすれば、価格が高いということです。
その理由として考えられるのは、
- 競泳水着にはない特別な加工が必要
- 競技人口が少ないため、大量生産が難しい
といったものが挙げられます。
10〜20年ほど前までの水球水着は競泳水着と同じ素材で作られることがほとんどでしたが、特に近年の水球水着はエナメルのような生地が伸縮しにくい素材を取り入れ、縫製のスタイルを変えるなど、競泳水着とは一線を画すデザイン、性能を取り入れるようになりました。
そういった特殊な側面もあって、高い価格帯での販売となっていることが多いようです。
2012年、中国で生まれた水着ブランドSWIMHXBYでもウォーターポロモデルが製造販売されていますが、他の競泳水着と比べても若干、高い金額を設定して販売しています。
S2000は水球用の水着?

▲バックジッパーが特徴のS2000。競泳向けと水球向けのモデルが存在する。
バックジッパーでまるで水球水着のような競泳水着S2000と呼ばれる水着があります。
この水着は1996年以前から存在していることをspeedo公式サイトのヒストリーから確認できますが、いつ頃から存在していたかは定かではありません。
その中でS2000が水球水着であるかのような話もありますが、正確にはS2000には競泳用に作られたものと水球用に作られたものが存在します。
水球用に作られたものは形状は競泳用と変わらないものの、やはり表面素材がラバー場となっているところが大きな特徴となっています。
残念ながら当サイトでの撮影実績はありませんが、水着自体はオークションでかなり高額な価格帯で取引されていることから、伝説の水着として扱われています。
まとめ:水球水着は水球に特化した水着であるということ
このように意外とフェチの世界では同列で語られることの多い水球水着ですが、競泳水着にはない性能やデザインはすべて競技のために備わったものであるということがわかります。
こうして見てみると水球水着の高いフィット性能もフェチの人にとっては受け入れられやすい点であることはもちろんですが、その他の部分でも競泳水着との差を考えると面白い話かもしれません。