
1990年代に始まったとされるお菓子系雑誌には発祥となった「クリーム」、「ホイップ」などいくつかありますが、その中で様々なアイドルが活躍しました。
現在の着エロ文化や地下アイドル、ひいてはアキバポップカルチャーの起点ともなった媒体ですが、掲載されたアイドルはもちろんのこと、使用された衣装もまた現在のブームを形作ったと言ってもいいでしょう。
今回はそのお菓子系雑誌にフォーカスし、その背景やどのような衣装が使われてきたのか解説いたします。
そもそもお菓子系雑誌とはどういったものか

▲お菓子系雑誌として代表的な「クリーム」。現在の美少女、フェチ、地下アイドルブームの前身であり、文化の一端を担った雑誌とも言える。
ブルセラブームの中で生まれた専門誌

▲ブルセラを彷彿とさせる衣装があるとすれば、セーラー服とスクール水着を組み合わせたものではないだろうか。
ブルセラとは戦後1960年代から2000年に至るまで学校教育の現場で女子用の体操服として用いられてきた「ブルマ」と学校制服である「セーラー服」を組み合わせて作られた造語のことですが、教育現場で使われる衣装に対するフェチ的な要素を総称して呼称した言葉だと言われています。
具体的に取り扱われたものとしてはブルマとセーラー服はもちろん、その中には女子中高生が使用する下着、水着、あるいは上履き、そして体液、排泄物までもがなどもブルセラの範疇に入っていたと考えられています。
お金になりやすい、という理由で着用した制服や体操服、人によっては下着や体液までもがブルセラショップという専門店で取引されるようになったことから、児童による性的な商売に対する関わりが問題視されるようになり、このことが遠因となって現在の青少年育成保護条例の改正が進んだという経緯もあります。
当時としてはロリータコンプレックスに対する罪の意識は少しずつ進んでいた時代ではあったものの、生物的な観点から子供を生むことができる年齢の児童に対しては(一般的な認識として)許容されていたということもあり、10歳未満の児童とは区別されていたという背景もあったことから、ロリコンが行き着く妥協点のような世代であった側面もあったと考えられます。
雑誌としてはベンチャー的な立場だった
クリームの成り立ちについて、同誌内で紹介されていたコーナーがありましたが、当時としては出版社の中でもベンチャー的な位置づけだったようで、2019年時点で刊行中であるクリームについても、編集部メンバーが3人だけだったと、意外と他メディアと比べ少ない予算で作られていた、ということがわかりました。
ブルセラブームの流れに乗った雑誌だっとはいえ、メインストリームであった男性向けグラビア誌、アダルト誌と比べると市場も規模も小さいものとして捉えられていたようです。
お菓子系雑誌の名前の由来

▲女子学生に関する雑誌は以前から存在していたものの、後にお菓子型と呼ばれるようになったのはcreamの存在が大きいだろう。
当時から「お菓子系」と銘打っていたわけではありませんが、後発の「ホイップ」(コアマガジン・2000年創刊)「ワッフル」(ぶんか社・1997年創刊)「ラッキークレープ」(バウハウス・1997年創刊)が、誌名にお菓子に関する名称を取り入れたことから、総じてお菓子系雑誌と呼ばれるようになりました。このことは先駆者であったクリームの影響が大きいと言えるでしょう。
もしフルーツの名前になっていれば「果物系」と呼ばれていたかもしれませんね。
お菓子系雑誌の立ち位置
ヌード系の雑誌やエロ本と呼ばれる紙媒体では1980年代後半にはセーラー服や体操服を衣装とする写真が多く掲載されていたこともあり、当時の美少女ブームとフェチ的な観点から見たブルセラを組み合わせた形態がお菓子系雑誌として登場することになりました。
つまりお菓子系雑誌は美少女とエロ系の要素を組み合わせた専門誌、ということができます。
当時としては言葉で「フェチのための」と明確に銘打ったものはありませんでしたが、それでも現在の水着フェチ、制服フェチのブームを形成したという意味では、これまでにほとんど見かけることがなかった「美少女とブルセラフェチの専門誌」が誕生したことになり、その存在を不動のものにしていきます。
代表的なお菓子系グラビア誌とサブ的なポジションのお菓子系グラビア誌
いわゆるお菓子系雑誌には代表的なものとして認識されているものと、意見が分かれるけれどもお菓子系の一端を担った雑誌に分けられます。
代表的なお菓子系雑誌
誌名 | 出版社 | 創刊 | 休刊・廃刊 |
---|---|---|---|
クリーム | コアマガジン(創刊時) | 1992年 | 現存 |
ラッキークレープ | バウハウス | 1997年 | 1999年 |
ワッフル | ぶんか社 | 1997年 | 2000年 |
ホイップ | コアマガジン | 2000年 | 2011年 |
サブ的なポジションのお菓子系グラビア誌
誌名 | 出版社 | 創刊 | 休刊・廃刊 |
---|---|---|---|
アクションカメラJr | ワニブックス | 1998年11月 | 休刊(年代不明) |
アクションPress | 少年出版社 | 1991年12月 | 休刊(年代不明) |
うるるッ! | コアマガジン | 1999年9月 | 休刊(年代不明) |
Oh!CaeN(おきゃん) | ダイアプレス | 1994年9月 | 休刊(年代不明) |
おじょう | 東京三世社 | 1994年5月 | 休刊(年代不明) |
Otome CLUB | 白夜書房 | 1985年5月 | 休刊(年代不明) |
クラスメイトジュニア | 少年出版社 | 1987年5月 | 休刊(年代不明) |
Comet SISTERS | 白夜書房 | 1986年7月 | 休刊(年代不明) |
Juicy PRESS | KKベストセラーズ | 1997年7月 | 休刊(年代不明) |
純情angel | 創竜社 | 1988年8月 | 休刊(年代不明) |
すっぴん | 英和出版 | 1986年3月 | 2007年 |
スーパー写真塾 | コアマガジン | 1984年11月 | 休刊(年代不明) |
スピカ | メディアボーイ | 2001年10月 | 休刊(年代不明) |
台風クラブ | 東京三世社 | 1989年7月 | 休刊(年代不明) |
投稿写真 | 孝友社出版 | 1984年12月 | 休刊(年代不明) |
DOKIDOKI2 HOMEROOM | 英和出版 | 1993年3月 | 休刊(年代不明) |
熱烈投稿 | 東京三世社 | 1985年10月 | 休刊(年代不明) |
Peke | サン出版 | 1994年10月 | 休刊(年代不明) |
Beppin-School | 英和出版 | 1991年1月 | 2008年 |
Popsy | 英和出版 | 1999年6月 | 休刊(年代不明) |
どのようなアイドルが活躍したか

▲ヌードになるようなアイドルは成人しているが、10代前半のジュニアアイドルが中心となり、ブルマやスクール水着を着用したグラビアが中心だった。
クリームの裏表紙には、その月の誌面に掲載されたアイドルの平均年齢が書かれていた。
芸能界に出入りし、テレビ番組でも見ることができるようなアイドルが活躍していたと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際には現在で言うところの地下アイドルのような、水面下で活動しているアイドル、あるいは女優の卵が掲載されることがほとんどでした。
テレビに出るようなアイドルとは露出の頻度や媒体の傾向に大きく違いがあることから、その線引は明確なものとなり「お菓子系アイドル」として親しまれることになります。
21世紀以降と違い、エロ系メディアに出るとなかなかテレビや通常のグラビア雑誌に出ることがなかったことから、後付のようにアイドル業界の棲み分けが起こっていたとも考えることができます。
お菓子系アイドルに明確なアイコン的アイドルはいないものの、1990年代には相川みさお、2000年代には鮎川穂乃果、姫咲友梨佳、升水美奈子、仲村みうが多くのファンを獲得したこともあり、場合によってはお菓子系アイドルの代表者として語られることもあります。
使用された衣装について
お菓子系雑誌では先述の通り、ブルセラブームの中で起こったこともあり、学校教育で使用されるような制服、体操服(ブルマ)、スクール水着が多く登場しました。
それ以外にも軽左営されるモデルによっては下着、ヌードまで掲載されていましたが、どのような衣装が使われたのか説明いたします。
制服

▲お菓子系雑誌で使われた制服はブレザーよりもセーラー服のほうが圧倒的に多い。
21世紀以降は様々な衣装メーカーがコスプレ用アイテムとしてセーラー服などを流通させていましたが、1990年代においては、そうしたメーカーも殆どなかったことから、どの学校で使用されているものか特定されない範囲内で、汎用的なセーラー服が用いられたのではないでしょうか。
基本的には紺色のものが中心で、街のどこにでもいるような雰囲気のものが採用されていたと考えられます。
体操服(ブルマ)

▲ブルマは学校衣料メーカーの製品が使われていた。今ではプレミアが付くようなものも採用されていた。
逆に言えば、現在、学校教育の現場で使われているハーフパンツはほとんど見かけることがありません。
ターゲットとなる世代が高齢化が進む中で、やはりハーフパンツが受け入れられない人たちの存在のことを考えると、下半身はブルマ一択となっているようです。
着用するアイドルも1990年代には学校で当然のように着用していましたが、2000年代以降に登場するアイドルについては「撮影以外でブルマははいたことがない」という人も出現するようになり、時代を感じる衣装になりつつあります。
使用されるブルマについてですが、コスプレ用アイテムとして使われるような白やピンクといった色のブルマはあまりお目にかかることがなく、実際に使われるような色彩のブルマ、つまり紺色や赤、緑などが主流となっています。
メーカーも学校用衣料メーカーが製造したもの中心で、現在ではプレミアがつくようなギャレックス、ジュレンク製のブルマを見かけることがあります。
スクール水着

▲旧スク水も使用されることはあったが、発刊時に主流だったスクール水着が使われることが多かった。
お菓子系雑誌が登場した1990年代においては競泳水着はあまり使われておらず、無地一色のスクール水着が採用されていることがほとんどでした。
こちらもブルマ等と同様、realiseを始めとする衣装向け水着メーカーがほとんど存在しなかったことから、学校教育現場で使われるスクール水着が中心でした。
形状は競泳スク水として人気の高いarena製ARN-75W、またはパイピングタイプのスクール水着、新スク水が多く採用されていました。
色は基本的に紺色がほとんどでしたが、一部のものについては赤や緑などのスクール水着も確認されています。
なお競泳水着については、当時あまりブームではなかったと考えられます。年齢的なイメージから見て、ハイレグで大人が着用するイメージの強い競泳水着は敬遠される傾向にあったかもしれません。
ビキニ
お菓子系雑誌はグラビア雑誌としての要素も持ち合わせていましたので、ビキニタイプの水着もいくつか採用されていました。
アイドルにとってはこちらのほうが喜ばれたのかもしれませんが、現在の着エロに見られるような紐パン、マイクロビキニのような形状のものはほとんどなく、海水浴やレジャープールで着るような一般的なビキニが使われていることがほとんどです。
この点については、あまりエロ路線に偏らずグラビアとして見せていくような方針があった可能性があります。
下着
お菓子系雑誌は美少女グラビア雑誌という側面と、アダルト要素の詰まったエロ路線という2つの要素を持ち合わせていたため、エロ路線が可能なアイドルについては下着を着用した写真も掲載されていました。
下着単体で使用されることもありますが、例えばセーラー服からの着崩しで、下着、ヌードに運ぶような展開も見受けられ、お菓子系雑誌としての挟持を守るための演出がなされていることが、他のエロ本にはない路線だったと考えられます。
無論、他のアダルト系雑誌についても、そういった展開はありますが、お菓子系雑誌として10代のあどけなさを出す、という意味では、過剰な装飾がなされている下着というよりは、無地一色の白パンティーなど、選ばれる下着にも一定の配慮があったものと考えられます。
まとめ:現在のアイドル、フェチブームの先駆的な存在となったお菓子系雑誌
21世紀に入るとインターネットメディアの台頭による雑誌購入数の減少、市場のエロに対する考え方の変化、児童ポルノ禁止法といった時代の流れにより、商売として難しい局面を迎えたお菓子系雑誌は、その多くが休刊という形で市場から姿を消す事になりますが、いくつかの媒体は今でも活動しているものがあります。
その背景にはお菓子系雑誌が市場に浸透させたセーラー服、体操服、スクール水着に対する魅力と、昨今の様々なフェチに対する認知、そして新しいムーブメントとして興った地下アイドルブームが、その下支えになっているものと考えられます。
もちろんメディアや運営者の変化により、お菓子系雑誌は小さくなってしまったけれども、形を変えて今でもブームは続いている、という見方もできます。
今後も社会情勢の中で、お菓子系雑誌を始めとする美少女メディアの形態が変わることは容易に想像できますが、完全に消滅してしまうことはないのではないでしょうか。
sukumizu.tvもそんなメディアの一端を担うものとして、今後の変化を見ていきたいと思います。