
一部の競技用競泳水着や水球用水着、特にコスチューム系の水着ではファスナーが付いているタイプの水着が多くあります。
特に弊サイトのような水着フェチの方向けに撮影用として用意している衣装にも数多くのファスナー付き水着があり、それらをモデルに着用してもらって撮影を数多く行ってきました。
そうした中での悩みはとにかく壊れてしまうということ。
使用頻度が高いのだから仕方のない部分はありますが、なぜ壊れてしまうのか、どうにかしてその頻度を下げることができないか、ということについて考えてみることにしました。
そもそもファスナー部分は壊れやすい
ファスナー付きの水着全体で捉えた場合、残念ながら水着の中でも一番壊れやすいのは、ファスナー部分です。
どんなものでもそうかもしれませんが、おおよそ物は一番、弱い箇所から壊れ始めます。
特に可動部は何度も動かせばそれだけ稼働による消耗が起こりますし、ファスナーで言えば、かみ合わせが悪くなったり、ほつれを巻き込んでしまったりリスクも高くなるというわけです。

▲簡単にファスナーの構造を示すと上記の通り。
ファスナーの開閉のつまみとしてスライダー、噛み合う部分がエレメント、服飾本体とファスナーを繋ぐ部分をシールという。
具体的にはファスナーを構成する要素の一つにエレメントと呼ばれる部分があります。
ファスナーにおけるエレメントとはかみ合わせの部分のことであり、この部分が何度も着脱することで摩耗が発生します。摩耗が発生することでかみ合わせが悪くなる、ということです。
そういった意味では、ファスナー付きの水着は他の水着にはないリスクがあるということは承知していかなければいけないかもしれません。
ファスナー部分が壊れやすいことに対する原因と対策
これまでの撮影の中で何度もファスナーが壊れてきたわけですが、その原因と対策について説明いたします。
壊れないようにするには、というよりは壊れにくくするには、という感じで読んでもらったほうがいいかもしれません。
1.着用サイズがあっていない
最も原因の一つとして考えやすく、大方の理由として挙げられるのが着用サイズの問題です。
本来、着用者にあっていないサイズ、小さいサイズを着用者が無理やりねじ込もうとしてファスナーが破損してしまうケースです。
女性の場合、一般的には太もも、腰回りさえ入ってしまえば、と考える人も少なくなく、無理にねじ込もうとすることがあります。
このときファスナーの下止の部分に大きな負荷がかかり、テープに固定している部分がとれてしまうことがあります。
また仮にうまく下半身部分を着用することができたとしても、上半身部分のサイズによってファスナーが破損することがあります。
これは胸のサイズはもちろんですが、背筋のある人も同様で、上半身部分に厚みがあると着用が難しくなる場合があります。
このときも同様に下止が壊れてしまったり、ファスナーの種類によっては噛み合ったエレメントが外れたり、スライダーからエレメントが外れたりと、様々な破損に繋がります。
着用サイズに対する対策法
着用サイズに対する対策は簡単に言ってしまえばサイズを大きなものを着用する他にありません。
女性は特に腰回り、下半身サイズを中心に考えがちですが、人によっては上半身の厚みによってサイズをもうワンサイズ上げる必要があります。
特にコスチューム水着にありがちなエナメル系の水着などは、ツーサイズ上のものを選ぶことも念頭に検討したほうがいいでしょう。
2.ファスナーの強度
実は私達がよく目にするファスナーにはいくつか種類があり、使用される目的によって選ばれています。
- 金属ファスナー
- 樹脂ファスナー
- ビスロンファスナー
これらファスナーはそれぞれ素材に違いがありますが、コスチュームで使用されるファスナーの多くは樹脂ファスナーが採用されていることが多いです。
樹脂ファスナーはポリエステルやナイロンを中心とした素材で作られており、デザイン性から見れば目立ちにくい、という特徴があります。
この目立ちにくい、という特性を利用してコスチュームなどに取り入れることが多くありますが、デザイン性を重視しすぎるがゆえにファスナーの強度を作り上げるエレメントの大きさも小さくなりがちなため、もともと強度に対してはそんなに高くない、ということが言えます。

▲特に中国系のコスチュームは小さめのエレメント、樹脂ファスナーのためか強度が弱そうなものが多い印象がある。
ファスナーの種類に対する対策法
コスプレ衣装を作っている人ならいざしらず、普通の人にはなかなかファスナーに対する対策は難しいところですが、この点について、当サイトの水着カスタムサービスを行っている職人さんからお話を伺うことができました。
それはコスチューム水着を見てもらったときの話になりますが「このファスナーだとあまり強度が出ないので、壊れやすいのでは」という指摘を受けたことがあります。
それではどのようなファスナーがいいのかというと、ビスロンファスナーであればデザイン性をある程度担保しつつ、強度のあるものが作れる、と言われました。
ビスロンファスナーはテープに射出成型したファスナーのことで、ポリアセタールやナイロン、ポリプロピレンなどの樹脂を素材としています。
ファスナーの特性としても豊富なものがあり、ものによって光を発するもの、防水性に優れているものなどがあります。
実は水着職人さんの話ではこの防水性能をもったものを使ったほうが、水着本来の性能としては正しいのではないかと考えているところがあり、ご自身でも水着を作る際は必ずビスロンファスナーを使っているのだそうです。
金属ファスナーだとデザイン面で困難になるところを、ビスロンファスナーによって担保した、ということでしょうか。
3.そもそもファスナーは消耗品である
これは対策のしようがない話になりますが、最後に覚えておきたいことはファスナーは消耗品ということです。
スライダーが何度も往復することによってかみ合わせの部分となるエレメントも消耗していきます。
よく着るようなファスナーが付いたズボンやアウターなどは、何度も着用しているうちに壊れてしまった、という人は少なくないと思いますが、まさにそれを同じ現象で、エレメントが摩耗して噛み合わなくなってしまったりすることがあります。
この点はどうしようもない部分なので、新しいものに買い換えるなどすることが必須となります。

▲スライダーを何度も動かせばファスナーは消耗していく。
ちなみに覚えておきたいファスナーの呼び名
ファスナーの言い方は他にあることを知ってる人も多いでしょう。
人によって、ジッパー、チャック、という言い方をする人もいます。
当サイトではファスナーという言い方をしておりますが、ジッパー、チャックはそれぞれ商標登録された名前であり、厳密に言えば許可を得ない限り商品名、商品説明などで使うことができません。
ちょっとしたうんちくですね。
ファスナー部分は衣服の中でもっとも壊れやすい部分と知っておくことが肝要
この通り、水着コスチュームなどのファスナーを長持ちさせたければ、なるべくサイズ的に負荷のかからないものを着用する、といったことがいちばん大事な点になりますが、何度も着用し摩耗することで壊れてしまう消耗品と知るべきだと考えます。
もしファスナーの取り付けに自信があれば、樹脂ファスナーをビスロンファスナーに取り替えることで、強度のあるコスチュームに変えることもできると思います。
特に水着は撮影などで水に浸かることもあるかもしれませんが、防水性のあるビスロンファスナーであれば他のファスナーと比べても消耗の度合いは変わってくるのではないでしょうか。
あまり重要視されないファスナーですが、こうした事も覚えておくとコスチュームに対する知見の足しになるかもしれません。