
人間がAIにイメージや言葉を伝えることで画像を生成できるようになった、ということをこちらのコラムで紹介しました。
その中でわかったことは、2022年現在ではやはり0から1を作ることはAIにとって難しいということが判明したものの、おそらく反復学習を繰り返せば、いつかはこの問題もクリアできるようになるのではないかということでした。
今回はそんなAIによる画像生成の方法である「元画像(写真)をイラスト化」することから、AIがフェチに対してどのようなアプローチでイラスト化を行っているのか、という点について、考察と解説を行います。
利用アプリは中国製の画像加工アプリ
今回使用した写真をイラスト化するAIは中国製のアプリ。
女性を中心に多くのユーザーが使っているもので、アプリとしての元々の機能は肌のトーンを良くしたり、整形的な要素も持ち合わせたものですが、AIにイラストを描かせる機能が実装されたため、そちらを使ってみることにしました。
AIによってイラスト化された水着写真のポイント
それではこのアプリのAIを利用した水着写真のイラスト化がどんな風に変化したのか見てみましょう。
1.光沢感がプラスされた

▲こちらの競泳水着は光沢感があまりない生地でできたものだが、AIでイラスト化したところ光沢感が強調されている。
実際にいくつかの画像で試してみてわかったことは光沢感が強調されたことです。
これはAIが「水着とは光沢感があるものだ」という学習によって表現されたものだと考えられますが、それをもってして「AIは水着フェチに理解がある」と考えるのは早計です。
あくまでこれまでこのAIに蓄積されたデータ(知識)によって最適化されたデータでしかない、と考えるのが妥当かもしれません。
というのも、今回のアプリAI以外のものでも試してみたところ、まったく光沢感のない違う結果が表現されたということもあり、結局のところAIは蓄積されたデータをアウトプットしているに過ぎないのではないか、と考えます。
とはいえ、この光沢感は本来の水着にはないものも含まれており、意図せずフェティッシュな表現になったということができます。
2.ロゴが付け加えられることが多い

▲こちらのスクール水着はロゴがついているが画像上は角度の関係でロゴが見えない。そこを補填するかたちで胸元にロゴが描写されている。
いくつかの画像を試してみてもう一つあるのはロゴが加えられた、ということです。
水着の中にはロゴの付いていない全くフラットなものもありますが、そうしたものでもロゴが加えられることがわかりました。
光沢と同様に競泳水着やスクール水着と認識された画像は「こういった水着にはロゴがついているものだろう」と判断され、ロゴが付いた画像が生成されたと考えられます。
またロゴの位置もたまにおかしな箇所についているものもありましたが、概ね競泳水着やスクール水着でよく見られる位置に配置されており、この点についてはAIの精度の高さを垣間見ることができました。
ロゴのデザインは何か適当に描いたような感じは否めませんが、それでも「なんかありそう」感はあるため、人間の目で見ても大筋で納得できるものだと思います。
3.水着のデザインが変化する

▲コスチューム系の水着ではあるが、腰元のデザインが大きく開いたようなものに変わっている。実際にあるかどうかはともかく、ありそうなデザインではある。
いくつかの水着写真についてはデザインが少し変化するということもわかりました。
これはAIによって描かれた水着でデザインが一部変化したりするもので、光沢感の付与とは別の次元の話です。
ロゴの追加に近いものがあり、AIが「この手の水着はこういったデザインがあるはず」という観点で変化を加えたものと考えられます。
ただ機械学習によって得られた膨大な水着デザインを取り入れたものと考えられるため、デザインに不自然さは感じませんでした。
4.生地の薄さを強調する

▲REALISEのコスチューム水着。たしかに生地が薄いという性質はもっているが、それをさらに表現したような描写となっている。
競泳水着やスクール水着をイラスト化する上で、概ね共通点として見られたのは生地の薄さを強調するという点です。
競泳水着やスクール水着によっては生地の厚みに違いがあるため、本来は必ずしも薄い生地でできた水着とは言えないものでも、あえて薄い生地を強調するクセがあるようです。
この点はお腹周りで主に見られ、あえてへそのくぼみを加えることで生地の薄さを表現しています。
AIによってはこの手の水着は薄いものであるという認識なのかもしれません。
5.別要素が加えられる

▲こちらは元画像から大幅に変化した例。ポーズに近いものはあるが、両腕を後ろに回している他、サンタ帽らしきものと、クリスマスツリーについているようなベルが首元に。背景もクリスマスのような趣だ。
これは背景やモデルのポーズの取り方でつけられるAIによる演出だと思われますが、水着以外の要素が加えられることが散見されました。
今回利用したアプリがいわゆる「写真を盛るため」のアプリであることから、特有の演出が取り入れられたと考えたほうがいいかもしれません。
例えば今回はクリスマスシーズンということもあったのか、背景が白で赤い水着だとサンタのコスプレ風に変化したりと、単純にAIのイラスト化だけでは説明がつかないようなものも見受けられました。
またAIの学習に不足している部分については「おそらくこういう演出が喜ばれるだろう」という感じで描き変えられるため、シリコンキャップ+ゴーグルの水着写真は見事に全く別物になっていました。

▲ゴーグルとシリコンキャップの競泳水着画像で試してみたところ、このような結果に。盛るためのアプリのためか表現にブレが見られる。このあたりの学習はまだ行えていないという証左かもしれない。
この点についてフォーカスして考察した場合、AIは決してフェチの世界を理解していない、ということができると思います。
AIはフェチを理解していないがポイントは抑えている

▲これまでの実験でAIがフェチを理解したとは言い難い結果となったが、ポイントを抑えたものは生成されていることを考えると、技術の進歩によってフェチコンテンツも自動生成される時代が来るかもしれない。
これらの実験結果から言えることは、AIが競泳水着やスクール水着フェチの人を理解するような学習は行われていないのではと考えられます。
ただし知識(知っている)という点で言えば、水着画像はこういうものだ、というものをデータとして膨大に蓄積しており、フェチの人が好むポイントは抑えていると考えられます。
そういった点で言えば、将来、アダルトやフェチコンテンツに特化したAIの出現により、AIが生成したフェチコンテンツが席巻する日もやってくるかもしれません。