ラバーファッションの世界は、多くの人にとって未知の領域かもしれません。
しかし、その魅力に取り憑かれた人々にとっては、それは単なる衣服以上の意味を持ちます。
今回、sukumizu.tvではラバーファッションに深く魅了された一人の女性、胡麻子さんにインタビューを行いました。
彼女の語る言葉からは、ラバーへの情熱と、それを通じて見出した自己表現の喜びが伝わってきます。
幼少期からアニメのヒロインに憧れを抱き、やがてラバーの世界に足を踏み入れた胡麻子さん。その人生は、単なるファッションの選択を超えて、自己発見と解放の物語でもありました。
このインタビューを通じて、読者の皆さんにラバーファッションの奥深さと、それを愛する人々の思いを少しでも感じていただければ幸いです。
-- 実はイベントのお手伝いをいただいたことがきっかけで、その時からインタビューを録らせてくださいとお話していて、ようやく実現できました(笑)
胡麻子さんにとっては色んなところで話されているかもしれませんが、ぜひsukumizu.tvでもお話を聞かせてください。
よろしくお願いいたします。
ヒロイン系アニメがベース
-- それでいきなり核心をついた質問なんですけど、そもそもなんでゴムとかラバーが好きになったんですか?
そもそもいきなり原点ですね。そうだなぁ、私、ああいうぴったりしたコスチュームって空想上のものだと思ってたんですよ。
幼稚園や小学生くらいのときだと思うんですけど、ヒロインが変身するようなアニメがきっかけで。
-- セーラーなんちゃらってやつですね
あの変身シーンって裸になってピタッと衣装を身につけるじゃないですか。
もちろんその時はラバーとか語る以前に素材についても深く考えてなかったんですけど、要するに変身モノのヒロイン系が、そもそも結構身近にあったんですよね、暮らしの中に。
結構、オタク文化で育ってきていることもあって、そういったアニメをテレビで見たり、グッズを買ったり、子どもならではのなりきりをやってみたり。
そういったヒロイン性のあるものが好きだったと思います。
-- そうなんですね。ということは、ある一定の年齢になった時にコスプレとかもやってたんですか?
それが学生の時はぜんぜんそういったこともなくて。ゴムを初めて着たのも、結局社会人になってからなんですよね。
-- それは意外ですね。ここ最近はコスプレすることも当たり前のように感じる時代なのに、そういった興味はなかったんですか。
興味はなかったです。なぜかというと自分が着た時にそのキャラの通りにはならないから。
顔のことだったり、メイクの技術のことだったり、体型のことだったり・・・そのキャラクターそのものにはなれないことがわかってたからです。
そういうこともあってコスプレもそうなんですが、あくまで二次元の存在であって、ガラス一枚で隔てたような自分からは近いけど遠い世界だったんですね。
-- なるほど。それは理解できるところがあります。それでゴムに触れたきっかけというのは
学生生活はちょいちょい自分の好きなものやジャンルををつまみ食いするような生活だったのですが、転機になるのはやっぱり社会人になってからですね。
実家を出てから、という感じです。
ラバーで社会人デビュー
-- 確かに実家を出たあとにこうした活動をされる方、多いみたいです
親の前では優等生キャラだったので(笑)
実家を出てから自分の中の「やってみたい」が実現しやすくなったというのはあると思います。
その中で今でもはっきり覚えているんですけど、社会人になった最初の年にゴムを着ました。
-- え、いきなり着ちゃったんですか(笑)
はい、そうなんです(笑)
-- 実家を離れるってやっぱり大きく変わりますね
当時Twitter(現X)でラバリスト大集合のイベントのステージに上がってる人を見て、「あれ?これってテレビに出るようなキャストさんとかが着るやつじゃないんだ」って思ったんですよ。
そこから「もしかしてこれって着ようと思えば着れるのかみたいな」と思い始めて。
-- そこからどういった経緯があったんですか?
あ、そこからTwitter経由で「そういうの興味あったら声かけてくださいね」と言っていたラバー好きの方と知り合って。
その時にキャットスーツとグローブとグローブとソックスはセパレートだったかな・・・それを着用することになったんです。
-- おおー、ついにという感じですね。手に触れたときの感想とかはありました?
憧れがなんか手にあるような。なんかこう空想していたものが実物としてあるっていう。ドキドキっていうか興奮は大きかったですね。
-- そこから着用していくわけですが、その時はどうでした?
なんかめちゃくちゃ嬉しかったです。あのとき見ていた変身モノのヒロインになれたみたいな。
もちろん黒のキャットスーツだったから、全然方向性とかは違うんですけど、普段の自分になれる手段が見つかったなって思って。
そういった感動とかあったと思います。
-- なるほど、自分の新しい一面を手に入れた、みたいな
そうですね。どちらかと言うと本来の自分になれたと思うところがあるんです。
自身のコンプレックスを隠すためのものでもあったゴムの存在
-- と言いますと?
さっきの話でコスプレに興味を持てなかったというところにつながるんですけど、私も女子らしく悩んでいた時期もあったんですよね。
醜美恐怖症というわけではないんですが、自分と世間の醜美の格差みたいなのは幼少期のころから持っていて・・・。
だからコスプレとかは自分と関係のない世界の存在で。
最初はそういったものはテレビに出るような人が着るものだと思ってました。
でもラバーのいいところってその匿名性というか没個性的だと思っていて、アイドルのように顔が可愛くなくちゃいけないとか、ヒロインのように正義の心を持ってなきゃいけないとか、そういうのないんですよ。
ラバーはそういうの全部隠してくれるから。
だから私が実際に着るとしたら、これが手段なんだなっていう確信がありました。これで私は満足できるんだなって。
-- 着ているときの気持ちってどういう感じなんですか?
全部嫌なところをマスキングされて。好きなツヤツヤピカピカが目の前にあって、それが自分の体だって言うんだから、それ以上幸せなことはないですよね。
全身が黒の光沢感で覆われている状態の自分が自分であって、そこに謙遜とか自分の中の後ろ暗い嫉妬とか、そういうの必要なくなるんですよね。気持ちが前向きになるというか。
-- なるほど、そういった経験や背景があったんですね。そこからラバー関係のコミュニティーに顔を出すようになったとか
そうですね。よく高校デビューとかあるじゃないですか。
それが私にとっては社会人でしかもラバーだったっていう(笑)
社会人になったタイミングで実家を出て、私もラバーを着たことで、一気に押し寄せてきた感じですね。
-- 高校生の時にはそういった発想はなかったんですね
やっぱり当時はまだ自信がなかったから。コスプレにせよラバーにせよ、自分にも程遠い世界だと思ってました。
少なくとも自分が触れられるとは思ってなかったですし。
ただ元々、アニメとかエロとか実家にいたときから好きだったんですけど、親の前では優等生ということもあってそれを隠して生きてたんですよね。
だから溜まりたまったものが実家を出た時に爆発しちゃったのかなって思います。
-- それからいろんな人と交流していくことになると思うのですが、その中で人生観が変わったような実感はありますか?
優等生でいようと思っていた自分が家を出て、ラバーを手にして、そういう人たちとコミュニケーションを取るようになって。
私は友達と付き合う時って、深く互いを知り合って理解してお付き合いをするっていうのが好きなんです。
だから長く昔から一緒にいる友達と長くお付き合いしてるっていうのが基本なんですけど、ラバーという一つの要素ができることによって、それだけで集まれるんですよね。
ラバーのその先にある誰かの年齢だとか職業だとか、持ってるものとか資産とか関係なく、まずラバーを着てたらラバーが好きなんですねっていうところで対等の立場。
私はそう思ってるんですけど、対等の立場で物事を見れた時に陽気になれるし、本来の自分になれる気がします。
ラバーが隠してくれなかったら、結局自信のない自分だと思うんですよね。
でもラバーを着て・・・めちゃくちゃヘビーラバーとか、好きなの着れば着るほどかっこよくなるんですよ。
だって。かっこよくなっていくから、人前に出るのが怖くなくなるじゃないですけど、少し自信がもてるようになったかもしれません。
胡麻子さんが愛してやまないヘビーラバー
-- そう言えばそのヘビーラバーがお好きということでしたが
はい。ヘビーラバーって言うと説明が難しいんですが、まずはトータルエンクローズで・・・。
-- トータルエンクローズとは
あ、頭から爪先まで覆うようなスタイルのことですね。
それでヘビーラバーって言うのは、そこからラバーのハーネスを着けたりコルセットを着けたり、マントを羽織ったりガスマスクをつけたり、っていうのがそうなのかなって思うんですけど。
あとはそもそもキャットスーツを分厚くするというのがあって。
-- え、そんなものもあるんですか
はい、そうですね。0.4mm厚くらいのものが動きやすいんですけど、そこから0.6mm、0.8mmと上げていって、より拘束感と無機物感を求めていく、みたいな。
見た目はどんどん着込んでいるみたいな感じになるのかな。
-- これはどんどん着ていくと人間らしさを失いますよね
そうです、そうです。
-- こういうのが理想とかあったりするんですか?
一番今重い装備を考えると、キャットスーツにコルセットをつけて、ハーネスつけて、グローブの上からもう一個グローブ、分厚いのをつけて、グローブの上からまたグローブ。
もちろんソックスもついてます。5本指です。ここをこだわりたいです。
そして頭はガスマスク。今はマントがあるのでマントなんですけど、さらにその上に行こうと思うと、コートが多分上から着るので、コートを着たいですね。
で、これだけだとまだパーティールックなんで、ガスマスクの先にチューブをつけて、リブレスバッグをたくさんぶら下げて。
-- リブレスバッグというと?
呼吸制御なんかで使われる、ガスマスクにつけるゴム製の袋のようなものですね。
-- かなり重装備になりましたね
機構をどうするかっていうのはあるんですけど、理想はすべてをラバーに包まれて完結したいんです。
呼吸も外気を取り込まないで、トイレも水分補給も全部スーツの中でできるような感じで。
-- 宇宙服のようなイメージですね
宇宙服はピッタリしないから、やっぱりゴムが良いです(笑)
-- そこはそうですよね(笑)それで言えば、胡麻子さんにとってのパーフェクトなスーツがあるとして、それを着てそのへんで立って、その中で息を吸って水飲んで排泄もして、というような一連の生命行為的なものを、そこで完結させたいみたいな感じなんでしょうか
してみたいですね
-- で、そういうときって何か考えたり、どうなっていると思います?
さぁ?イッちゃってるんじゃないですか(笑)
胡麻子さんの将来やってみたいこととメッセージ
-- それではインタビューも佳境に入ってきましたが、将来やってみたいこととかありますか?
やっぱりヘビーラバーが好きなので、実現できればさっき話したようなこともやりたいですが、集合写真を撮ってみたいなあというのはあります。
-- 日本国内だとあまり見かけませんよね、ヘビーラバーの方
そうみたいですね。友達や知っている人以外でめっちゃヘビー好きみたいな人、意外と身近にいなくて。
でもヘビーラバー好きで集まってかっこいい野外写真でも撮れたら、最高だなって思います。
-- 早いうちに実現できるといいですね
本当ですね。何年後になるかわかんないけど。みんな年取ってくるし早くできるといいなって思います。
でもヘビーラバーが好きな人に、私のような世代もいるよって。世代にも一人はいるよみたいな。
Xとか続けてる理由が、やっぱりラバー好きの方とつながっていたいから。
誰でも趣味の世界に飛び込んでくる瞬間ってあると思うので、その時にちょっとこの人に聞いてみようかなくらいになったら、私としては幸せです。
やっぱり自分がそうしてもらったから、そうできるようでありたいなみたいなのは実は密かに思ってます。
-- 初心者さんも大歓迎、みたいな
全然大歓迎です。フラットなことしかお答えできないんですけど、広く浅くまず知ってもらって、興が乗ってきたら、自分でこういうのやってみようかなって楽しんでもらえるといいですね。
そして知らない間にヘビーラバーになったみたいな、できたら最高だよなって(笑)
-- 欲と願望がにじみ出てます(笑)
こんなこと言ってたら話しかけにくいかもって思われちゃうかも(笑)
-- でもどんな趣味でもそうかも知れませんが、ラバーのことが気になり始めた人って、自分がそこで何者になれるかも分かってないと思うんですよね。理想の姿はあるかもしれないけど、そこに行き着くまでにどうすればいいかわからないという人もいるんじゃないかなと
そうですね。何していいか分からない人っていますよね。やってみたいけど仲間もいないし、どうしたらいいんだろうみたいな。
悩んでる人はたぶんいっぱいいるし、そういう人ってやっぱり人を頼りたいっていうところあると思うんですよ。
だから全然踏み台にしてもらって構わないですよ。
-- そういうかたちで初心者の方にメッセージをいただけると嬉しい人もきっと多いと思います。本日はありがとうございました。
ぜひ踏み台にして踏み越えてください(笑)
こちらこそありがとうございました。