
- フェチ中級者~上級者
- 競泳水着の寿命が気になる方
- ロゴは劣化するものと知っていて長持ちさせたいと考えている方
あるモデルさんとのやり取りの中で「そう言えば古い水着のロゴってすぐボロボロになりますよね」という話になりました。
確かに競泳水着のロゴは時間の経過とともに劣化し、剥がれたりボロボロと崩れたりしてしまいます。
もしかしたら塩素の影響かも?と考える人は少なくないと思いますが、実はプールに入ったりしなくてもこの現象は発生してしまいます。
今回はそんな競泳水着のロゴがなぜ劣化してしまうのか、剥がれてしまうのかについて解説いたします。
なぜ競泳水着のロゴが剥がれたり劣化してしまうのか

競泳水着のロゴが剥がれたり劣化してしまう原因はいくつかあります。
特にプールに入ったり、水につけたりすることでダメージが発生します。
塩素や化学薬品による影響
これは水着にとっての宿命とも言えますが、プールの水には塩素や消毒剤が含まれており、これらの化学物質が水着の素材やプリントされたロゴにダメージを与えます。
特に、プリントロゴは表面に接着されたものが多く、塩素によって接着力が弱まり、剥がれやすくなります。
競泳水着のロゴは、熱転写プリントやスクリーンプリント、またはゴム系・樹脂系の素材で圧着されていることが多く、塩素や消毒剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)の影響を受けやすいです。
以下のような化学的作用がロゴの劣化を引き起こします。
1. 塩素の酸化作用による分解
塩素は強い酸化作用を持ち、ロゴを構成する樹脂・ゴム・インクなどの有機物と反応して、分解・劣化を引き起こします。
具体的に発生する現象のメカニズムとしては、
- 接着剤の劣化からのロゴの剥がれ
- ゴム・樹脂系ロゴの硬化・ひび割れ
- インクの退色・ひび割れ
といったものが挙げられます。
熱転写プリントなどでは、接着剤(ポリウレタン系やアクリル系)が用いられていますが、塩素によって加水分解や酸化が促進され、接着力が低下します。
またシリコンプリントやラバープリントのロゴは、酸化が進むと柔軟性が失われ、ひび割れや剥離が発生します。
ロゴに使用される顔料や樹脂が酸化により分解され、色あせやひび割れが生じます。
2. 加水分解による接着剤・樹脂の劣化
プール水には塩素に加えて水分が多く含まれています。ポリウレタン系の接着剤や樹脂は加水分解を受けやすく、次のような劣化が起こります。
具体的に発生する現象のメカニズムとしては、
- 接着剤の分解で剥がれやすくなる
- 水分と反応し、接着剤の分子構造が壊れてしまう。
- ポリウレタン系素材のベタつき・粉化
ロゴだけでなく競泳水着の素材として使われるポリウレタンも加水分解しやすく、ロゴ部分と一緒に劣化が進みます。
3. 塩素によるプラスチックの脆化
塩素は塩素化反応を引き起こし、ロゴや接着剤に含まれるプラスチック(ポリウレタン・PVCなど)のポリマー鎖を破壊します。これにより、ロゴ部分が脆くなり、ひび割れや剥がれが発生します。
プールに入ると塩素の作用によって水着が劣化することは、こちらの記事でもご紹介させていただきました。
摩擦によるダメージ
競泳水着のロゴは、使用頻度が増えるにつれて徐々に剥がれたり、ひび割れたりしてしまいます。これは水中での動作や環境の影響、さらには保管方法が関係しています。
着脱時の摩擦
競泳水着は伸縮性の高い素材を使用しているため、着るときや脱ぐときに強く引っ張ることになります。
特にロゴが熱転写プリントやゴム系樹脂の場合、引っ張りによるストレスでひび割れや剥離が起こりやすくなります。
泳いでいる最中の摩擦
水の抵抗に加え、腕や脚の動きで水着全体がわずかに動くため、ロゴ部分に繰り返し摩擦が生じます。
紫外線(UV)の影響
屋外プールでの練習や、直射日光の当たる場所での保管は、競泳水着のロゴに大きな影響を与えます。これは、紫外線(UV)がロゴの素材を酸化・分解し、色あせやひび割れを引き起こすためです。
洗濯や保管方法の問題
競泳水着はデリケートな素材でできており、間違った洗濯方法や保管方法によってロゴが摩耗しやすくなります。
洗濯時の問題点:洗剤の影響
強い洗剤を使うと、ロゴの接着剤やプリントインクが分解され、剥がれやすくなります。
漂白剤が含まれた洗剤は特に避けるべきです。
こすり洗いによる摩擦
ロゴ部分を強くこすると、ひび割れや剥がれの原因になります。
乾燥機の使用
高温の乾燥機は、ロゴの接着剤を劣化させ、剥がれを引き起こします。
保管時の問題点
ロゴは折りたたんで保管する際にダメージを与えてしまう可能性があります。
具体的にはロゴ部分を折り曲げると、ひび割れや剥がれが発生しやすくなります。
また湿気の多い場所での保管も水着のポリウレタンを劣化させ、ロゴの剥がれを早めます。
何もしていないのにロゴが劣化してしまうのはなぜ?
この記事を読んでいる方は競泳水着マニアな方が多いかもしれません。
特に収集派の方にとっては水につけることもないし、自分や誰かに着せたりもしていないのに・・・と考える人は少なくないのではないでしょうか。
上記の理由より考えられることは、保管状態にあると考えられます。
つまり
- ロゴの部分が折りたたまれていないか
- 湿気が多いところで保管していないか
この2点がロゴを劣化させているポイントになるかもしれません。
気になった方は今一度見直してみましょう。
ロゴはあくまで水着に貼り付けられているだけ
水着に付けられているロゴは、ロゴが印刷されたプリントシートを熱圧着によって取り付けられています。見た目は水着と一体化しているように見えますが、実際には別素材のプリントが水着表面に貼り付けられていると考えてください。
しかし、単純な熱圧着というわけではなく、メーカーによっては特殊な粘着技術やコーティングを施しており、耐久性も考慮されています。ただし、長期間の使用や繰り返しの摩擦・洗濯などで劣化することがあります。
水着のロゴが割れる、あるいは剥がれる現象は、主にプリントシートの素材の経年劣化や接着力の低下によるものです。水着本体は、通常はロゴよりも耐久性が高く、結果としてロゴの劣化が先に起こることが多いです。
ロゴの寿命はどの程度なのか
当サイト調べのデータになりますが、各社水着メーカーから出ている水着のロゴを見ていますと、若干差があるようにも思えますが、新品を買ってきて箱から出さず、何もしていない状態で確認したところ5~6年でロゴの劣化が始まりました。
具体的には割れというよりはロゴが剥がれてきたような感じになります。
プールに浸かったり、着用を繰り返せばこの寿命はどんどん短いものになると思いますが、プール利用で1年未満。モデル着用で何度か、という場合でも3年未満でロゴの劣化が目に見えて現れてきます。
ただすべてのロゴが同じような寿命を持っているかといえば、決してそうではありません。
確認しただけでも、圧着プリントを行ったようなタイプのものや、金あるいは銀素材を使ったロゴ、布地に直接縫い込まれたようなワッペンタイプのものもありました。
それぞれにおいて寿命が違うのは言うまでもありませんが、種類によって耐久性に違いがあるということです。
当サイト調べでメーカーロゴの劣化具合を比較してみた
ここからは推測の話も含んでいますが、冒頭のモデルさんと話をしていたときに「mizunoのロゴはなんだか強そうだね」という話が出ました。
確かに当サイトが備蓄している競泳水着を並べてみても、不思議とmizuno製の競泳水着については、ロゴが劣化しているものを見たという記憶があまりありません。
そのモデルさんも同じことを話されていたので、もしかしたらメーカーによってプリントシートに違いがあるのかも?という予想はあります。


上にある写真を御覧いただきたいのですが、ほぼ同年代であるarena、mizunoの2モデルを比較するとわかりやすいかもしれません。
一概に同一の環境であったとは言えないので難しいところはありますが、モデル着用向けとして使用頻度はmizunoのほうが高く、かつどちらも新品だったものです。どちらも水濡れはありません。
その中で見ると、やはりmizunoのロゴのほうがしっかりと状態を保ってくれているようにも見えます。
剥がれてしまったロゴの修理は可能?
それでは最後に剥がれてしまったロゴは修理が可能かどうか、という部分について言及します。
割れてしまったロゴはさすがに修復不可能であることはわかるかと思いますが、ただの剥がれだった場合はどうでしょうか?
この場合、熱圧着をやり直せばいいということになりますので、家庭用のアイロンを使えばなんとなくできそうなイメージはあるかと思います。
ただし水着本体自体は熱に弱いため、いたずらに圧着させようとすると水着本体が破損してしまうことが考えられますので、無理はしないほうがいいでしょう。
ロゴマークの劣化で注意したいのはオークション
ロゴはほっておいても劣化するわけですから、これは避けられることではありません。
その点で気をつけたいのは、オークションで競泳水着、スクール水着を購入する場合の話です。
ヤフオクを見ていますと、近年のモデルが並んでいる中に、10年以上の超レアなモデルが出品されていることがあります。
商品詳細を確認すると「新品未開封」と書かれていることがありますが、注意するべきはこの点です。
確かに新品であることには変わりないかもしれませんが、製造より数年経ってしまった水着は未開封とは言え水着の劣化は進んでいますので、購入して開けたあとにロゴが剥がれてしまった、ということは珍しくない確率で起こります。
特に10年以上前のモデル、2000年代初頭、それ以前の水着となると、新品であったとしてもロゴ部分は相当ダメージを受けているはずです。このことを考えると、大昔に発売されたモデルのロゴについては、半ば諦める気持ちで落札に臨んだほうがいいと言えます。
そもそもロゴはなんでついてるの?
水着につけられたメーカーのロゴは、その水着がどこのメーカーのものであるかを示す基準になりますが、ロゴが入っているからと言って、直接的にそのメーカーが競技用の水着を作っていい、と承認を受けているわけではありません。
現在では臀部付近に貼られるFINA承認マークが入っているものでないと、少なくとも公式競技では使用できない水着となっています(ただし練習時、非公式競技においてはこの限りではありません)

現代のスポーツ界では器具を製造販売を行うメーカーはもちろんのこと、スポンサーなど多様な団体からの協力無くしては実現できません。
もちろん各団体は慈善事業だけで行うわけにはいかないので、自分の団体(企業)の認知性を高めるため、ロゴをつけています。
ロゴを付けるには制限がある
とはいえ、自由にロゴを付けていいのかと言われれば決してそうではありません。
公益財団法人日本水泳連盟の規約はFINAに準拠していますが、日本水泳連盟競泳競技規則「第17条その他」の2項において、下記のように定められています。
全ての競技者・監督・コーチ・役員は、「競技会において着用又は携行することができる水泳用品、用具の商業ロゴマーク等についての取り扱い規程」(資料⑥)に違反する物品を、競技会場内で着用・携行して宣伝・広告の媒体となってはならない。
(1) 公式競技会および公認競技会のシンボルマークや、本連盟が認めたものは、この規則から除外する。
(2) この項に違反した者は、本連盟の審査によって登録競技者の資格を失う。
つまり水着に着いたロゴを使って宣伝的な活動を行ってはいけないと明示されているのです。
競技者はもちろん、競技に関わる人達はこのことを守らなければいけません。
それでは「どの範囲内であれば広告・宣伝行為とみなされないのか」については、「競泳競技会において着用又は携行することができる水泳用品、用具のロゴマーク等についての取扱規程」という規定に取りまとめられています。
この規定の第2条部分が、ロゴの指摘に関する事項になります。
(ロゴマーク等の使用基準)
第2条 全ての競技者、監督、コーチ及び役員(以下「競技者等」という。)は、競技会の会場内(招集所出口からテーブル・植栽・柵・チェーン・パーテーション等の造作物で仕切られた範囲内)で着用する水着及びウエアー・持ち物等に付けることができる所属チーム等の名称・マーク、スポンサーのロゴマーク、メーカーのロゴマークについて、
つぎのとおり取り扱う。
(中略)
5)水着には、30 ㎠以内の本連盟に事前承認を得たスポンサーロゴマークを1個及びメーカーロゴマークをウエストより上部に1個、下部に1個付けることができる。ただし、これらのメーカーのロゴマークは、相互に隣接して付けてはならない。ツーピースの水着には、上部に1個、下部に1個付けることができる
(中略)
(2)ロゴマーク面積の計測方法は着用前のものとし、ロゴマークを正方形あるいは長方形とみなし、縦×横で面積を求める。
引用:競泳競技会において着用又は携行することができる水泳用品、用具のロゴマーク等についての取扱規程
このようにロゴの大きさにまで言及しており、かつ測定方法も明示されています。
これを守らなければ規定違反とみなされ、関わった人に対して何らかのペナルティが課せられます。
各種メーカーから出ている水着のロゴは違いがあれど、大きさが一定なのはそのためです。
スクール水着のロゴは少し違う
スクール水着の場合、ロゴが熱圧着ではなく、ワッペン上のものを縫い付けたものや、タグのようにつけられていることが多いため、ロゴ部分が劣化している、というものはあまりお目にかかったことがありません。

この点は競泳水着と違うと言えるところですが、ARN-75Wのような競泳スク水は熱圧着でロゴが付けられているので、劣化が起こってしまいます。

水着のロゴは劣化しやすく、不可抗力な部分もある
一般的には先述の通り、ロゴは熱圧着プリントによってつけられているため、私達が思う以上に単純な仕組みでつけられていますが、ロゴが劣化しやすいということはあまり知られていません。
たとえ新品であったとしても古いモデルの場合、ロゴ自体が剥がれ始めているものもあるため、コレクターにとっては頭の痛いところですが、ある程度の割り切りも必要かもしれません。