
当サイトでは「スクール水着フェチ」「競泳水着フェチ」を主題にした画像の配信を行ったり、イベントや撮影会も開くようになりましたが、そもそもフェチとはどういった意味のある言葉でしょうか。
私達は普段から「脚フェチ」だの「うなじフェチ」といった身体的な部分にフォーカスしたものをあげることもあれば、「運動靴フェチ」や「ラバーフェチ」といった特定の物質、素材にもフェチという言葉を使うことがあります。
つまるところ、フェチとは特定のなにかに興奮を覚えてしまう感情、とざっくり言うことができるかもしれませんが、実際にフェチにはどのような意味合いがあるのかについて説明いたします。
この記事のポイント
- フェチとはざっくり言えば、特定の何かに興奮を覚えてしまう感情のこと。
- フェチとは呪物崇拝から生まれた言葉で、宗教的な意味合いから心理学者の考えを経て、性的な意味合いを持ち始めた。
- 本来、フェチという言葉は、性的な部分とはかけ離れた場所にあるという。
フェチとは呪物崇拝から生まれた言葉

▲例えば誰も踏み入れることのできないような山は霊山として恐れられているところもあるが、こうした存在そのものがフェティッシュとされていた。
そもそもフェチの元々の概念が生まれたのは18世紀頃と言われています。
1757年、西アフリカの宗教と古代エジプトの宗教における魔術的位相を比較研究していた、思想家、シャルル・ド・ブロスによって作られた概念です。
とはいえ、あくまで宗教的な意味で使われた概念で、この頃から性的な意味で考えられていたわけではありません。
呪物崇拝とは、人類有史以前から存在していた超自然現象や、それに引き起こされてできた物質に対する崇拝のことで、例えば風雪によって削られ奇妙な形をした岩だったり、超巨大な樹木であったりと、大昔の人類がなぜそのようなものが出現したのかはわからないけれども、大自然の作り出す驚異に畏怖し、崇拝するようになった、ということはなんとなく想像できると思います。
そうした崇拝の対象をフェティッシュと呼ぶようになります。この時点では当然、現代の身体に対するものや異性がもつ着衣、物品に対しての性的倒錯という意味では使われていませんでした。
さて、話をシャルル・ド・ブロスに戻しますが、彼が1760年に匿名で出版した『フェティシュ諸神の崇拝』にて人類最古の信仰形態を『フェティシズム』と命名した、と言われています。
つまりフェティッシュという言葉は、信仰の対象(物質)であり、フェティシズムが「フェティッシュに進行する行為・形態ではないかと考えられます。
フェティッシュには言葉にもルーツがある
フェティッシュという言葉はフランス語のféticheから来ていると言われています。この言葉自体、宗教的な意味合いがあることは先述のとおりですが、元々はポルトガル語の呪符・護符を意味するフェイティソ(feitiço)から派生した言葉であり、さらにその前にはラテン語の動詞である(facere)から派生した形容詞(facticius)が源流にあると考えられています。
その意味は「人工の(もの)」で何らかの物質であるということがわかります。
フェチという言葉が性的な意味合いを持ち始めた理由

▲ブーツはフェティッシュの代表的なものかもしれないが、これらものに対する愛情がフェチとされるようになったのは、19世紀頃だ。
さて、そんな性的な部分とはかけ離れた場所にあるようなフェチという言葉ですが、なぜこの言葉が性的な意味合い、性的倒錯という言葉になったのでしょうか。
フェティッシュという概念がシャルル・ド・ブロスによって生まれたことは先述のとおりですが、その後、ドイツの哲学者カール・マルクスによってフェティッシュという概念が取り上げられることになります。
マルクスはお金というものが人と人との関係が、物と物との関係性に現れるようになることを物象化論と位置づけましたが、資本主義において物をやり取りするにはお金が必要であるという観点から、お金に対する考え方に呪物崇拝的な考え、すなわちフェティシズムの用語を流用したと言われています。
その後、19世紀後半において、社会学者オーギュスト・コント、心理学者アルフレッド・ビネーによって、「性欲の対象となるもの」と「対象となるものによって引き起こされる性欲」の関係としてフェティッシュ、フェティシズムという言葉を流用し、性的倒錯の説明を行うようになりました。
また、オーストリアの精神科医として有名なジークムント・フロイトが、特定の物質や物品、あるいは人間の身体の一部に対する愛情を持つ行為自体を説明するためにフェティシズムの概念を流用したと言われています。
フェティシズムという概念は宗教的な部分から発生したものですが、その後、物質に対する執着、あるいは信仰という言葉が、高名なマルクスによって使われ、後世のフロイトらによって特定の性的感情に対しての説明を成すために使われるようになった、というのは感慨深いことかもしれません。
いずれにせよ、現代で使われるフェティシズムはフロイトらによって説明されたものが、そのまま性的倒錯として使われるようになったと考えられています。
エロとフェチの違いってなに?

▲一部では時々においてフェチとエロを混同するケースがあるが、それぞれは性的な言葉で語られる同線上にあるものの、明確に違いがある。
さて、フェティッシュ、フェティシズムという概念がどういった経緯を経て現代に存続しているのかはおわかりいただけたかと思いますが、よく語られるのはフェチとエロの違いではないでしょうか。
これまでの説明を読めば明らかにエロとフェチの意味は違うということはわかりますが、いずれも性的な意味合いとして使われる言葉であるがゆえに混同されてしまうことも珍しくありません。
そもそもエロとはあくまで性的欲求が(動機はどうであれ)正常なセックス行為を目的とした意味合いのある言葉であるとするならば、フェチは性的な意味合いははらみつつも、異性に対する性器への欲求というよりは、特定の物質、部位に対して性的興奮を覚える、またはいつも以上に強い興奮を覚えることであり、それがそのままセックスにつながるかは二の次だと考えられます。
もっと踏み込んだ言い方をすれば、エロは正常でフェチは異常であると言えます。今や当たり前のようにフェチという言葉は使われているものの、(子孫を残すかどうかは別として)異性の肉体を求めセックスに及ぶことと、特定の物質や身体の部位に対して性的興奮を覚えることは精神医学上でも明確な違いがあるとされているからです。
フェチは病気ということ?

▲精神医学の世界から見ればフェティシズムは異常性愛の一種であると言われているが、それは社会生活に著しい問題を抱えてしまったケースなので、多くの人は当てはまらないと考えられる。
フェチが異常であるという話を出しましたが、これは精神医学上における考え方であり、文化的な側面という意味ではありません。
むしろ文化的側面で言うのであれば、呪術崇拝から生まれた概念ということを考えれば、これも一つの崇拝の形ということであり人間的に異常であるかどうかを示すかどうかは議論が必要なところでしょう。
フロイトやビネーらがフェティッシュという概念を性的欲求の説明に取り入れたのも文化的な側面としてではなく、あくまで精神医学的な考えに基づいて取り入れたものと考えられます。
精神医学上のフェティシズムは直接的な性行為に及びたいとする性的欲求に対するものに対して、性的倒錯、変態性欲としてカテゴリーされており、性的対象の歪曲であると言われています。
アメリカ精神医学会には『精神障害の診断と統計マニュアル』というものがあり、そこにフェティシズムの診断基準というものが規定されているそうです。
それによると、
- 長期(少なくとも6ヶ月以上)にわたる、生命のない対象物に対する強烈な性衝動、妄想、行動が持続、反復する。
- その性衝動、妄想、行動により著しい苦痛、または社会的、職業的な障害を引き起こしている。
- 対象物は衣服や性具に限らない。
とされているものが性的倒錯とされています。
現代の日本国内で言われているフェチとは違った考え方に基づいており、とりわけ多くの方にとっては、この精神医学上の基準には当てはまらないと考えられるため、どちらかといえば文化的側面によるフェティッシュを享受していると言ってもいいかもしれません。
フェチという言葉は様々な視点で語られる
人類が有史以前からとってきた行動を考えれば、フェティッシュという概念は宗教的であり、経済的でもあり、また文化的、性的側面を持った言葉ということがおわかりいただけたかと思います。
特に現代では性的な側面性の強い言葉ではあるものの、根底にあるのは特定の物質、事象に対する信仰や固執する行為であり、もしかすると人間の根底にあるものこそがフェティシズムであるのかもしれません。
少し精神医学の世界にも触れましたが、必ずしもフェティシズム的な行為をもっているからといって異常とはここでは言うことができませんが、これらのものや行為が芸術性を生むこともあるわけですから、おそらく人類が今後も存続するのであれば、切っても切り離せない概念なのかもしれません。